むし歯とともに歯科の二大疾患と呼ばれる歯周病。その歯周病がお口に止まらず、全身に影響を与え、さまざまな病気や問題の原因のひとつとなっていることがわかってきました。
ここでは若い頃から気をつけたい糖尿病、肥満、近年注目されている早産と低体重児出産、重篤な病気である心筋梗塞、脳梗塞と歯周病の関係についてご紹介します。
●歯周病と糖尿病
歯周病が全身疾患に悪影響をもたらす代表的な例が、日本人に多い「2型糖尿病(以下、糖尿病)」です。
糖尿病は血糖を代謝するインスリンと呼ばれるホルモンが少ない、もしくは働きが悪いため、血糖が代謝されないことに起因します。
現在ではライフスタイルの欧米化により、若い人や子どもにも増加しています。
近年、歯周病の悪化が糖尿病を悪化させることがわかってきました。
歯周病が悪化すると歯周病菌が血管内に侵入して全身を駆け巡ります。
それによって全身に炎症が起こると、その状態を抑えるためにサイトカインと呼ばれる伝達物質が産生されます。
しかしこのサイトカインが増えすぎるとインスリンの働きを妨げ、結果として糖尿病をさらに悪化させてしまうのです。
逆に考えると歯周病の治療によって糖尿病が改善すると考えることができ、実際に快方したというケースが数多く報告されています。
このため日本糖尿病学会は糖尿病治療ガイドラインにおいて、歯周病の治療を推奨しています。
●歯周病と肥満
体脂肪が必要以上に蓄えられてしまった「肥満」は糖尿病の前段階といわれています。
肥満と判定された人は歯周病にかかっている割合が高く、歯周病が肥満の原因のひとつである可能性が指摘されています。
●歯周病と早産・低体重児出産
妊婦が歯周病にかかると、早産や低体重児出産のリスクが高まることがわかってきました。
そのリスクは約7倍に上り、タバコやアルコール、高齢出産などを大きくしのいでいます。
そのメカニズムはまだ十分に解明されていませんが、歯周病の炎症により分泌される物質が、子宮の収縮にかかわるため、それが胎盤に何らかの影響を与えるためと考えられています。
またその一方、妊婦は女性ホルモンの影響を受け、歯周病にかかりやすいという問題もあります。
そのため妊婦のお口の健康管理はとても重要になります。
妊娠がわかった段階で歯科健診を受けるほか、吐き気を防ぐために香料が強い歯磨き剤を避ける、洗口液を活用するといった工夫が有効になります。
●歯周病と心筋梗塞・脳梗塞
心筋梗塞と脳梗塞は心臓や脳の血管が詰まる病気で、動脈硬化が原因となります。
そして近年、この動脈硬化が起きている部分から歯周病菌が見つかったという報告が数多くなされています。
このため歯周病菌が血管に入り込み、全身に運ばれているなかで、心臓や脳の血管に障害を起こしていると考えられるようになりました。
歯周病と心筋梗塞、脳梗塞の関係について詳細は明らかにされていませんが、国内の専門家の間では歯周病が心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めるという認識がほぼ共通の見方になりつつあります。
今後のさらなる研究の進展が期待されます。
